そっく部分1 イラスト

デッサンは描くモチーフが身近なものほど、意外な発見があるものです。

先日のこと。
ふと、棚に置いてあるぬいぐるみと目が合いました。
家族が昔もらってきたおサルのぬいぐるみです。

太細のソーセージを組み合わせたような体、ベロ~ンとしまりのないポーズにとぼけ顔。それに反して、きりっとネクタイをしめてるかわいいヤツです。
フサフサした毛が生えていないかわりに、まるでA5ランクの牛肉のような霜降り柄のニット素材でできています。

僕は無性にその霜降りニットを、ちまちまとデッサンしたくなってきました。

デッサンは普通、単純化してササっと仕上げるとカッコイイものなんですが、この日の僕は細かく描きたい気分だったんです。
僕はおサルくんを机上の白いステージに座らせて、楽しむためのデッサンを始めました。

まずは紙におおざっぱにおサルくんを捉え、よく観察しながら鉛筆を動かしていきます。
そして、ちまちまと描き始めたとき、僕はこの霜降りニットをどこかで見た気がしました。

なんだっけ…?

でも思い出せないので描き進めます。

そっく400
ぬいぐるみを描くときは、生地の縫い目を描くのがポイントです。
テディベアの顔だと、だいたい目から鼻にかけてのラインに縫い目があります。
このおサルは口の脇にありました。

ん?
この口の脇の縫い目も見たことがあるぞ…でも思い出せそうで思い出せないなあ。

そんなことを考えつつ、完成に向けてさらにちまちま…そしてデッサン終了!

ああ楽しかった、と僕は机に鉛筆を置くと、コロコロ転がり落ちてしまいました。
拾おうとして視線を足元に向けた僕は、そこでようやく気付いたのです。

「あっ、靴下だ!」

その日僕がはいていた靴下が、おサルの霜降りニットと同じ生地だったのです。

調べてみると、これはSOCKMONKEY(ソックモンキー)といって、靴下で手作りするおサルのぬいぐるみだそうです。
口の部分は、靴下のかかとだったんですね。

もう10年近く飾ってあったのに、デッサンするまでまったく気付かなかった!
ごめんね、おサルくん。